大村謙二郎「都市プランナーの雑読記-その62/芝健介『ホロコースト ナチスによるユダヤ人大量虐殺の全貌』」

都市プランナーの雑読記 その62

芝健介『ホロコースト ナチスによるユダヤ人大量虐殺の全貌』中公新書、2008

2023年7月31日
大  村   謙 二 郎

 NHKの番組、新・映像の世紀「時代は独裁者を求めた」の中で、少しだけアウシュビッツのことが触れられていたのですが、それに触発され、ホロコーストの概要を知ろうと思って読んだ本です。
 読んでいて、胸が詰まるというか、気分が滅入るような話ですが、それにしても、これだけ大量のユダヤ人、マイノリティを組織的に殺戮したシステムはどう考えても理解ができません。
 ドイツ人やナチス固有の問題でなく、スターリン、毛沢東の治下でもジェノサイドともいうべき殺戮があったのですが。
 それでもなぜ、どのような形でホロコーストがおこなわれたかを把握し、少しでもこういった事柄を減少、防止させることの必要性が高く、その意味で、歴史家の事実の把握、検証という作業は大切だなとあらためて思いました。
 この書では、序章で反ユダヤ主義の背景を導入部で扱っています。反ユダヤ主義はナチスドイツで突然変異的に発生した事柄でなく、ヨーロッパ各地で反ユダヤ主義の歴史があったことが示されています。
 時間の経緯の中、ナチスドイツでどのようにユダヤ人迫害がはじまり、ポーランド侵攻、ソ連侵攻の展開の中で、ますます、ユダヤ人迫害が進展し、ゲットー化政策、絶滅収容所へいたる道について、関わった組織、人物を明らかにしつつ叙述されていきます。
 私はアウシュビッツくらいしか知らなかったのですが、この書ではトブレリンカ、ソビブル、ベウジェッツ、ヘウムノなどの絶滅収容所の実態や各地の基幹強制収容所の実態が明らかにされています。
 600万人にのぼる人々が殺戮されたことは想像を超える事態でそれぞれの人々が持っていた人生、生活を思うと慄然とします。
 以前、ベルリンを訪れたとき、ホロコースト記念館を訪ねました。虐殺された人々の生活、家族関係等がパネル化されていましたが、何とも形容できない事実の重みに圧倒されました。まだ、虐殺された人々の記録発掘は続けられているのだと思います。
 本書では最後にホロコーストと歴史学と題して、歴史学はこの問題にどう立ち向かってきたか、誰が、組織がどう関わったたかについてのいくつかの説を解説され、全容の理解に役立ちます。小著ですが、重い本でした。