大村謙二郎「都市プランナーの雑読記その61/渡辺尚司『百姓の力 江戸時代から見える日本』」

都市プランナーの雑読記 その61

渡辺尚司『百姓の力 江戸時代から見える日本』角川ソフィア文庫、2015.12

2023年7月5日
大 村 謙二郎

 3代か4代前の日本人の大半は村に住み、働く百姓だったのですが、では江戸や明治初期の日本の村のことについてどこまで知っているのか。
 今でもわれわれの社会、組織のあり方に江戸の村社会の考え方、行動規範が刷り込まれていて、その影響力が残っているかも知れません。仲間内での評判は気にする、あるいは周りを見て同調する、一方で自分の組織、世間を離れると身勝手な行動を取ったり、旅の恥はかきすてとなったりします。
 むろん、江戸時代と現代では社会、経済の様相も異なり、現代人の大半は都市に住み、都市的生活を当たり前のものとしています。でも、深いところで、江戸の社会を引き継いでいる部分があったり、封建的、身分社会的色彩が強いと思われていた江戸の村には独自の自治組織、合意形成システムがあったりして、コミュニティのあり方が問われている現代、江戸の村のありようは新鮮で示唆を受ける部分がありそうです。
 この書はそういった問題関心に答えてくれる形で江戸時代の村がどういう構造を持っていたのか、どう変容、発展して来たかを適切な問題設定をする形で、わかりやすく解説してくれています。
 江戸時代の村と現代社会対比、特質はどのようなものか(第1章)、なぜ村に古文書が大量に残されたのか(第2章)、村はどのように生まれたのか(第3章)、土地は誰のものだったのか(第4章)、山野は誰のものだったのか(第5章)、年貢はどのように取られたのか(第6章)、村落共同体とは何か(第7章)、領主と村はどう関わったのか(第8章)、村と村はどう結び合ったのか(第9章)、村人の世界はどこまで広がっていったのか(第10章)、村はどう変わっていったのか(第11章)と展開し、終わりの箇所で近代にどうつながっていったのかを整理しています。
 村人が封建領主の重い年貢と搾取で苦しんでいたという暗黒の江戸時代のイメージを覆し、たくましく自立する村人、文化、娯楽を楽しむ村人、百姓の姿を具体的な資料に基づいて描いています。
 こちらが不勉強だったのですが、江戸の村の姿をよく知ることができ、また、江戸時代の村の土地所有構造、村の運営の実態がよくわかり勉強になりました。小著ですが中味の濃い本です。