都市プランナーの雑読記 その85
鹿島茂『東京時間旅行』作品社、2017.10
2024年10月23日
大 村 謙二郎
鹿島茂が首都としての東京の地区や東京に関連するものについての由来、来歴、歴史などについて書いたエッセイをアンソロジーとしてまとめたものが本書。彼が記したパリ時間旅行の東京版といえよう。
彼の専門は19世紀フランス、パリということだが、この人の守備範囲は恐ろしく広く、また、いろいろなことを調べて、それをわかりやすく読者に伝える技術は流石にプロだと思わせる。
小さいときから、多くの小説、文学作品、雑誌を読んできて、その要点、面白いところを的確に伝え、鹿島流に咀嚼してユーモアを交えて論じられるのは本当にたいしたものだ。
膨大な執筆活動をする中で、いろいろエネルギッシュに各地を訪れる、行動の人でもあり、こういう化け物みたいな人がいるのだと感心する。荒俣宏もそうだが、世の中には怪物、異才の人がいろんなところにいるものだ。
20年以上も前に書いたエッセイ、探訪記が期せずして時間ものになっているのも編集の妙だと思う。
「はじめに-東京五輪大作戦」は2020年東京オリンピックをひかえた2017年時点の書き下ろしだが、中学時代の1964年を重ねて、書いている点も面白い。
神田神保町、新宿、神楽坂、丸の内、渋沢栄一、銀座、三越、丸善、上野、日比谷公園、カフェ、ラーメン、国立国会図書館、東京江戸博物館、私鉄沿線、第1部の失われた東京を求めてで、取り上げられているテーマは場所、人物、施設、飲食と様々だが東京を多面的、多角的に捉える切り口としてユニークで説得力がある。
第2部の「東京から遠く離れて」では横浜、栃木、熱海、京都(古書店巡り)が取り上げられている。
鹿島はあとがきで書いているが、自分の専門分野とかけ離れている、関係ないと思われる分野についても執筆依頼があれば、断ることなく引き受けて、我武者羅にあるいは好奇心を旺盛に全開させて、関係文献、資料を読み、取材をして、なんとか執筆をこなすとか。いやはや、すごい馬力の人だし、到底見習えないけど、万分の1でも、私もいろんなことに興味を持って、都市計画の枠を広げたいものだ。