都市プランナーの雑読記 その109
山本太郎『抗生物質と人間-マイクロバイオームの危機』岩波新書、2017.09
2026年2月17日
大 村 謙二郎
山本は外務省で国際感染対策に従事していた経験もある、国際保健学、感染症学を専門を専門とする医師で、現在は長崎大学の教授。
この人の「感染症と文明」も幅広く、文明史的に感染症の問題を解説していて、蒙を啓かれたが、この書は説明もいろいろな事例、エピソードが多く盛り込まれており、現代が人間と病気対策の関係について再考を迫る意味で大変刺激的で面白い本だった。
抗生物質がかつては不治の病と思われていた難病や深刻な病気の治療に大きな功績を挙げてきたことを認めた上で、安易な乱用がかえって違う病気、難病を誘発していることをマイクロバイオームという概念で見事に解き明かしている。
かつてはわるい細菌を撲滅することが病気治療の大きな目的であったし、細菌学が発展して来たのだが、人間の身体には人間の細胞の数十倍に達する微生物、細菌が存在、共生しており、体調の維持管理に大きな役割を果たしているらしいことが最近の研究で明らかになっているようだ。人間の個体概念の根本的検討を迫る知見だ。風邪対策として安易に抗生物質を服用することが、抗菌体や抗ウィルス体がつくられるなど、むしろ、人類発生以来、長い時間をかけて、体内に共生、共存してきた細菌、微生物と共生していくかが問われている。
生物を植物、動物と二分するのではなく、第三の柱として微生物群がいることを知ったのは新鮮な驚きだった。