大村謙二郎「都市プランナーの雑読記-その34/水島治郎『ポピュリズムとは何か 民主主義の敵か、改革の希望か』」

水島治郎『ポピュリズムとは何か 民主主義の敵か、改革の希望か』中公新書、2016.12

2021年9月10日
大 村 謙 二 郎

水島さんはオランダ政治史、ヨーロッパ政治史、比較政治を専門とされる政治学者です。
水島さんによれば、ポピュリズムは2種類の定義があるとの事。第一は政党や議会を迂回して「指導者が大衆に直接訴える政治」の意味で使われるポピュリズム。第二は「人民」の立場から既成政治やエリートを批判する政治運動をポピュリズムと定義する立場です。
本書は、この第2の定義に依拠しながら、ポピュリズムが必ずしもデモクラシーと対極に立つものでなく、デモクラシーから生まれる矛盾、問題を抱えており、単純なポピュリズム批判では立ちゆかなくなっている状況を、各国の事例を交えて、わかりやすく説得力を持って論じています。
第1章ではポピュリズムとは何か、本書全体の導入部を描いています。
第2章では南北アメリカでポピュリズムがいかに誕生、発展してきたのかを描いています。アルゼンチンでペロンがいかに多くの人民の支持を得たか、その社会政策について論じています。
第3章では、ヨーロッパ先進諸国でなぜ、どのようにポピュリズムが近年広がりつつあるのか、ヨーロッパ極右政党の動きを、フランス、オーストリア、ベルギーの事例を交えて、具体的に解説しています。
第4章はリベラルゆえの「反イスラム」と題して、環境・福祉先進国であるデンマークでなぜこういった動きが生じているかを具体的に示しています。
第5章はスイスの国民投票が持つパラドックスにより、移民排斥を主張する政党が着実に力をつけつつある様子を描いています。
第6章はイギリスのEU離脱をめぐる動きには、置き去りにされた人々の逆転劇の側面があったこと、これも水島さんが定義するポピュリズムの運動であることが論じられます。
第7章はグローバル化するポピュリズムと題して、アメリカ大統領選におけるトランプ勝利の顛末、日本における維新の躍進などを題材に、ポピュリズムが流行熱のような現象でなく、相当しぶとく、持続性を持ち始めていることを論じています。
ポピュリズムというとなんとなく浅薄な思想で、ネガティブな偏見、先入観を持ちがちで、その主張の中味をちゃんと読まないで、無視しがちでした。なぜ、こういった主張が一定の指示を得て、政治の世界でも大きな影響を持つようになるのか理解することが大切だと思います。
私などは、ポピュリズムは浅薄な思想であり、忌避すべきものというネガティブな先入観を持っていました。そう簡単に扱えるものでなく、こういった運動が出てくるにはそれなりの理由、根拠があることを本書を通じて知ることが出来ました。
ポピュリズムの本質、背景を知る上で、大変有益な本ですし、具体事例に即して描かれており、大変興味深く読めました。