「環境白書」
2019年6月21日
鷺 坂 長 美
6月5日は「環境の日」です。環境基本法に定められていて、環境保全についての関心と理解を深め、環境保全活動の意欲を高めるために設ける、とされています。ストックホルムで開催された国連人間環境会議(1972年6月5日~16日)を記念して6月5日が「世界環境デー」になっていたことから定められました。したがって、6月は環境月間として全国で様々な催し物が開催され、環境省でもその前後の土日にかけて代々木公園で「エコライフフェア」などのイベントを開催しています。環境省に勤務していたころはおおむね毎年行っていました。当日は多くの人で賑わいますが、どうせ法律で定めるなら国民の祝日にできなかったのかな、などと思ったものでした。
国民の祝日にはなっていないものの、法律で定める記念日が他にあるのかと思って調べてみると、最近の法律には多くの記念日が制定されています。「勤労青少年の日」(7月第3土曜日、勤労青少年福祉法)「国際音楽の日」(10月1日、音楽文化振興法)「子ども読書の日」(4月23日、子ども読書活動推進法)「文字・活字文化の日」(10月27日、文字活字文化法)「津波防災の日」(11月5日、津波対策推進法)「古典の日」(11月1日、古典の日法)「水の日」(8月1日、水循環基本法)などです。最近では「無電柱化の日」(11月10日、無電柱化推進法)も定められています。それぞれ、啓発事業などをするようにとされています。ただ、私の認識不足かもしれませんが、お休みにならないとなかなか認知度は高くならないような気がします。もちろん、国民の祝日はお祝いをする日ですので、少し趣旨が違うかもしれません。
環境基本法では、年次報告として、毎年国会に、環境の状況や政府の施策についての報告をしなければならない、とされています。一般に「環境白書」といわれているものです。公害対策基本法の時代から公表されていて、環境省のホームページでは昭和43年度の最初の白書(当時は「公害白書」と言っていました)から見ることができます。6月の環境月間中に前年度分のものが公表されます。令和最初の白書は6月7日に公表されています。
循環型社会推進基本法が2000年に制定されます。すると、こちらの法律にも年次報告を国会にすることになっています。循環法によるものは廃棄物・リサイクル関係に特化した白書になりますが、環境白書にも廃棄物やリサイクルに関する記述も必要で、国会からみると似たような白書が2冊あるように見えてしまいます。環境省で国会担当をしているときですが、何とか法律の根拠は別でも国会報告を1冊にできないか、と思い、衆参の議員法制局等に相談し、最後は議会運営委員会の委員の方々にも了承してもらって、合本が認められました。2007年度版からは「環境白書・循環型社会白書」となりました。
2008年に生物多様性基本法が制定されます。この法律でも同じように年次報告をすることになっていますが、既に環境白書と循環型社会白書を合本で報告していたので、生物多様性基本法に基づく国会報告も合本で対応することになりました。2009年度版以降のものは「環境白書・循環型社会白書・生物多様性白書」となっています。法律として成立はしませんでしたが、地球温暖化対策基本法案を提出したことがありました。この中にも年次報告の規定がありました。法律が成立していたら、合本するとしても「環境白書・循環型社会白書・生物多様性白書・地球温暖化対策白書」という名前にでもなるのでしょうか。法律の根拠が違うので仕方ないかもしれませんが、次回環境に関する基本法を策定するときには環境基本法との関係をもう少し整理することが期待されます。
(平成最後の環境白書の表紙)
(出展 環境省ホームページhttp://www.env.go.jp/policy/hakusyo/h30/index.html)