「環境基本計画」
2018年5月28日
鷺 坂 長 美
「環境基本計画」が4月17日に閣議決定されました。1994年の第一次計画から数えて5回目の計画です。SDGsやパリ協定等の国際的な潮流を踏まえ、「環境・経済・社会」の統合的な向上を目指し、6つの重点戦略を定め施策を展開するとしています。ここでSDGsというのは国連の定めた「持続可能な開発のためのアジェンダ2030」の目標のことで、パリ協定とはもちろん2015年に採択された気候変動対策の国際的な枠組みのことです。
私が2001年に旧自治省から環境省へ移った時に最初に担当した仕事が環境基本計画のフォローアップでした。役所の作る計画というと、ともすれば利用したい部分のみ利用し、その他の部分は見向きもしないということになりがちですが、この計画は中央環境審議会で各省庁の担当者を呼んで進捗状況をちゃんとフォローしていました。中央省庁再編の一環で環境庁から環境省に昇格したてのころで、環境分野については政府全体の司令塔になる、政府全体の施策に環境配慮を求める、という意気込みがあったのでは、と思います。環境基本計画は環境基本法により策定されるものですが、法が制定された1993年当時、基本法は13本しかありませんでした。基本法は国民の権利義務に直接かかわるものではないものの、まさに国の重要施策について、憲法と個別法をつなぐ、国の方向性を示すという大変重い法律です。その計画ということで国民の関心もあり、みなが強い気持ちをもっていたことを思い出します。
計画は、法律では中央環境審議会の意見を聞いて環境大臣が案を定めるとなっていますが、事務局ではその時代、時代に合った特色づくりにいつも大変苦労します。第一次の計画では「循環、共生、参加、国際的取組」をキーワードにいわば理念を示し、第二次計画(2000年)では「理念から実行へ」ということで11の戦略プログラムを設定し、各省庁の推進体制の強化に言及しています。第三次計画(2006年)では環境・経済・社会の統合的向上と定量的な目標による管理をうたいあげ、第四次計画(2012年)では低炭素・循環・自然共生に安全を加え、9つの重点分野とともに東日本大震災からの復興等にも言及しています。省内の各部局との共同作業になりますが、「忙しいときに余計な仕事を」というような目で見られることもあり担当者は平身低頭です。
先日、基本法という名のつく法律がどのくらいあるか、と思って法令検索で調べてみました。なんと49本もあります。議員立法で制定されることも多いようですが、基本法なら直接国民の権利義務に関係なくても法律として立案できるという法制局の考えも影響しているのかもしれません。そして、それぞれの基本法には名前こそ異なっても基本計画、大綱、基本方針、戦略等を定めることとされています。関係者にとってひとつひとつ重要な分野で、施策の方向性を示しているということでは重要な意味を持つものですが、あまり多いと苦労して策定した計画が国民からあまり関心を持たれないというようなことになりはしないか、心配です。ただ、今回の環境基本計画はいくつかの社説にも取り上げられていました。OBの杞憂かもしれません。