最新テレビ事情(2022年2月)
2022年2月14日
小 澤 英 明
ぐっさんの「魚が食べたい!~地魚さがして3000港」(BS-朝日 水曜午後9時)というテレビ番組を先日見ていたら、コバンザメが好きという20歳の漁師が出てきた(徳島県鞆奥漁港)。そのまだ少年の面影を残す若者の様子が実に幸せそうでよかった。中学生のころ、魚釣りばかりやっていて、オカンから、「そんなに好きなら漁師になったら」と言われて、漁師になったようだ。いいおかあさんだ。コバンザメは味が非常によいらしい。飼っている生け簀に手を入れて、コバンザメとじゃれて、ピタッと腕にはりつかれては、はがしていた。情が移ってしまい、もう食べられないと話していたのもよかった。
楽楽精算のCMがおもしろい。「最近、経理の横澤さんがやさしくなった」で始まるのだが、旅行のお土産のようなお菓子をにこにこして周囲に配るその姿と、以前の紙だらけの経理資料に悩まされて、鬼のような形相になる対比が秀逸である。いくつかのバージョンがあるようで、「わけわかめ」(訳わかんない)、「いみふみこ」(意味不明)と、大量の書類の処理の指示をする上司を馬鹿にするバージョンもいい。CMの多くはどうでもよくて、また、嫌なCMも少なくないのだが、楽楽精算のCMは例外的に好きである。最近のCMの長さやCMの入るタイミングには嫌悪感さえいだくのだが、こういう笑えるCMは、そんな嫌悪感をふきとばす。テレビ会社は広告料をもらうのではなく、楽楽精算には、逆に謝礼のお金を払ってもいいくらいのものである。
「人生の楽園」(テレ朝 土曜午後6時)は好きな番組である。私の世代にぴったりの内容で、第二の人生を起業してがんばっているシニア夫婦やシニアの主人公とそれを助ける兄弟姉妹や子供たちが出てくる。こういう番組では、日本各地の良さが自然にあらわれてくる。知らない土地だけど、住んでみたい気持ちを抑えられなくなる。主人公の多くは、頑張り屋さんで、だから人もついていくのだろうし、充実した日を送るから、毎日が楽園になるのだろう。自分の可能性を自分から閉ざさないというプラス思考がいい。
老後は、しかし、ゆっくりしたいよね、というのも本音であって、「吉田類の酒場放浪記」(BS-TBS 月曜午後9時)にはほっとする。私が9時から夕食をとることが多いので、NHKのニュースウオッチ9とシャッフルしつつ、大体、酒場放浪記の方を観ている。これは、1時間を4つに分け、それぞれ1軒の居酒屋をとりあげ、吉田類が酒を飲みながら肴に舌鼓を打つという趣向であるが、最新の取材は最初の1つだけで、残りの3つは再放送である。しかし、その多くがはじめて見るような感興をもよおすものだから、性質が悪い。これは、新しい記憶がふっとんでいくシニア世代を対象とするから成り立っているのであって、私の孫娘なら、「これ、見たことある!」の一言でチャンネルを切り換えるだろう。妻には、「人がお酒を飲んでいるのを見てどこがおもしろいの?」とあきれられるが、自分が飲んだり食べたりする気分になるのが楽しいのであって、人の姿を見て楽しんでいるわけではない。
テレビには言いたいことも多いのだが、好きな番組も多少はあるので、いいことにするか。