「地球温暖化対策推進法」
2018年12月13日
鷺 坂 長 美
12月は「地球温暖化防止月間」です。1997年12月に気候変動枠組条約の第3回締約国会議COP3が京都で開催されたのを契機として定められています。賢い選択を促す「COOL CHOICE」関係のイベントが地方公共団体をはじめ各関係機関で開催されます。ウォームビズ(室温20℃で少々厚着して快適に過ごす)、ウォームシェア(暖かい部屋にみんなで集まろう)に代表されるような国民運動です。12月は「大気汚染防止推進月間」でもあります。この季節ビル等での暖房利用、気象条件の影響等から大気汚染物質濃度が高くなる傾向があるといわれています。公害健康被害補償法の大気汚染に係る新規認定がなくなり、予防事業が強化された1988年から行われている普及啓発活動です。暖房使用を控えましょう、エコドライブを勧めましょう、等ですが、地球温暖化対策の国民運動と似ている部分もあります。
CO2が大気汚染物質かどうかという議論がかつてありました。CO2が問題なのは大気中の濃度が高くなると温室効果により地球全体の気候に影響するというものです。直接、人の健康に影響を与える汚染物質ではないように見えます。アメリカでは大気汚染物質とされていますが、我が国では大気汚染物質とはとらえず大気汚染防止法ではなく、地球温暖化対策推進法を制定して対応しています。自動車の排ガス規制は大気汚染防止法にその根拠がありますが、燃費基準の根拠はいわゆる省エネ法となります。
地球温暖化対策推進法は「小さく生んで大きく育てる」の典型のような法律です。京都議定書が採択された直後に法律として産声を上げますが、当初のものは国等の責務、基本方針や政府の実行計画について規定する程度の内容で、条文の数もわずか16条でした。その後、京都議定書の発効や議定書に基づく第一約束期間の開始に合わせて、毎年のように改正が行われ、今では条文の数にして68条の大法律に育っています。京都議定書目標達成計画の策定(2002年改正)、温室効果ガス排出量算定公表制度(2005年改正)、京都メカニズム活用のための仕組み(2006年改正)、排出抑制指針の策定、地域計画の策定(2008年改正)、京都議定書目標達成計画の廃止(2013年)などです。
ところで、CO2等の温室効果ガスの削減対策は日本では地球温暖化対策といいますが、国際的には「気候変動の緩和措置」といっています。条約の名称も気候変動枠組条約(United Nation Framework Convention on Climate Change)です。温室効果ガスの大気中濃度は日本の衛星「いぶき」の観測でここ10年程度の間に385ppmから406ppmにまで上昇していますが、高温・熱波のみならず、異常な寒波、巨大台風・ハリケーン、集中豪雨や干ばつなど様々な異常気象の原因にもなっています。「温暖化」という表現では異常な寒波があると、ともすれば懐疑論が出てきますが、最近の集中豪雨や猛暑等の異常気象は明らかで、「気候変動」という表現を使ったほうがすっきりするのでは、と思いますが、どうでしょうか。温暖化による気候変動の影響に適応していくための措置は、これまでも「気候変動」という言葉を使っていましたし、今年制定された法律名も「気候変動適応法」となっています。
CO2排出削減のための国民運動では、冬の「ウォームビズ」に対し夏服の軽装運動「クールビズ」は有名です。「おしゃれ」なネイミングで2005年の新語流行語大賞のトップテンにノミネートされた表現です。クールビズを始めたころは役所の執務室の入り口には失礼にならないように「軽装運動期間中です」というような断り書きを常に書いておいたものです。今では夏のノーネクタイは民間でも当たり前でなってきています。
(環境省cool choiceイメージキャラクター)