「グリーン購入法」顧問鷺坂長美

「グリーン購入法」

2018年11月9日
鷺 坂 長 美

 環境省に移ったころ(2001年1月)ですが、役所では閣議決定した「率先実行計画」への取組みを行っていました。財やサービスの購入、使用にあたり環境保全への配慮をすべし、ということです。紙は再生紙を使いましょう、紙の使用量を減らすために両面印刷にしましょう、OA機器も省エネタイプにしましょう、節電のためお昼は消灯しましょう、公用車も低公害車にしましょう、などなどです。
 閣議決定による取組ですので、どこの役所も同じはずですが、両面コピーの説明資料はそれまで見たことがありませんでした。当時のコピー機で数枚の資料を両面コピーするには、一枚一枚上下左右に気を付けなければ出来上がった資料が使えたものにはなりません。忙しい中で職員に両面コピーさせるのは大変ではないか、と最初は思ったものでしたが、環境省ではすでにそれ用のコピー機が導入されていて、原稿をセットすれば自動で両面になり、それほどの労力なくできていました。資料を作成する側も見る側も慣れてしまえば、ということでしょう。
 率先実行計画のうち物品調達については2000年に成立したグリーン購入法(正式には「国等による環境物品等の調達の推進等に関する法律」)の取組みに代わります。この法律を見たとき、どこに権利義務に関する規定があるのだろうかと思いました。法律は国民の権利義務にかかわる事項がなければならない、と役人の駆け出しのころよく言われたものでしたが、この法律にはそもそも権利義務に関する規定がなく、政府や関係機関に対して物品等の調達に当たって環境物品を選択するよう努めなければならない、と書いてあるだけです。法律がなくても閣議決定でもできそうですし、これで民間の人が環境物品を選択するようにはならないのでは、などと思いました。
 でもどうでしょう。法律ができて政府機関が調達する環境物品の内容が公表されると、紙とか文具とかオフィス機器等瞬く間に社会全体に広がっていったような気がします。閣議決定時代ではみられなかった法律の威力でしょうか。
 これに味を占めたわけではありませんが、同じような構造をもつ法律として2007年にグリーン契約法(「国等における温室効果ガス等の排出の削減に配慮した契約の推進に関する法律」)が制定されています。環境配慮促進法(環境レポート法とも言いますが、正式には「環境情報の提供の促進等による特定事業者の環境に配慮した事業活動の促進に関する法律」)は2004年に制定されていますが、これも環境報告書の公表が義務づけられているのは各省庁と政府の関係法人のみです。大企業ですら努力までです。いずれにしても、本来閣議決定ですむような内容を法律という国会での議論を踏まえたうえで制定すること自体が社会に浸透させる手段になることもあるのかな、と当時は感心したものでした。

(環境省「あかり未来計画」のLED写真)