「都市プランナーの雑読記-その6」顧問大村謙二郎

平岡昭利『アホウドリを追った日本人-一攫千金の夢と南洋進出』岩波新書、2015.03

2020年7月31日
大 村 謙 二 郎

 平岡さんは歴史地理学が専門の私とほぼ同世代の方。
 明治から大正にかけて一攫千金の夢を求めて、はるか南方の島々に渡航する日本人が続々と出ていたそうです。彼らが追い求めたのは無人島に生息するアホウドリで、これを捉え撲殺して、その羽毛を取り欧州に輸出すると多額の金を獲得できることが解り、これに成功したものは巨万の富を築くことになります。
 密漁を行い、虚偽の無人島開発の許可を申告し政府からの許可を得て、次々と南洋の島々に進出します。小笠原諸島からはるか離れた南鳥島へ、南北大東島へと、さらにはハワイ諸島や南沙諸島までと海千山千の男たちが無人島を求めて、南洋開発に乗り出していきます。しかし、原始的な資源略奪型のアホウドリ捕獲、撲殺ですから、みるみるうちにアホウドリは絶滅の危機に瀕することになります。
 明治から大正にかけて、いかに日本が鳥類輸出帝国となっていったのか、無人島開発にかかわった山師的な投資家たちとそれに使われた過酷な労働を強いられ、時には置き去られた出稼ぎ労働者たちの運命などが具体的に描写されており、私が全く知らなかった日本近代史の一面をしらされ、大変興味深く読みました。
 平岡さんがこのテーマの調査研究にはいるきっかけとなったのは40年近く前の沖縄から東方360キロもはなれた南大東島で3ヶ月ほど調査に携わったとき、八丈島の人がこの島の開発にかかわったことの疑問から端を発したそうです。
 それ以来折に触れて、いろいろ資料を発掘、渉猟され、また関係者へのヒヤリングで、本書の元になる専門書を刊行されたそうですが、本書はこの専門書をベースに一般にわかりやすい形の新書として刊行されたそうです。
 1900年代に入ると、南方の島々はアホウドリの捕獲対象地としてではなく、資源(リン鉱島)として有望なところとして見なおされ、日本帝国、海軍が南進論を唱えることになるそうです。平岡さんのこの書では、坂の上の雲のヒーローで、日本海海戦の作戦参謀として活躍した秋山真之が南進論にかかわっていたという、意外な事実も示されています。
 昨年、中国船が小笠原諸島にサンゴの密漁に多数やってきたとの報道がなされていましたが、明治から大正にかけての日本人もエコノミックアニマルさながらに密漁、無人島占拠をおこなっていたのだなと、歴史の皮肉というかおもしろさを感じました。
 国が勃興期、元気なときは世界各地に進出していくのだなと感じます。明治以降、欧米諸国に追いつくことを目指して、近代化、富国強兵に邁進した日本は第二次大戦の敗戦で一度、ペシャンコになりました。戦後の焼け跡から、奇跡の復興をし、高度成長期にはエコノミックアニマルといわれるほど世界各地に日本商品を売り歩き、日本の首相はトランジスター商人と揶揄されたとか。バブル期も日本人はウサギ小屋に住み、猛烈に働いていると批判されていいました。さて、縮退期に入った日本の若者はどうなっているのでしょうか。最近、海外へ留学する日本の若者が減ってきているという話を聞きます。国も勃興期、成熟期、縮退期があるのでしょうか。日本が再び元気を取り戻してほしいものです。