「都市プランナーの雑読記-その31/立花隆『中核VS革マル』『宇宙からの帰還』」顧問大村謙二郎

都市ブランナーの雑読記-その31

立花隆『中核VS革マル』(上・下)、講談社、1975.11
立花隆『宇宙からの帰還』中央公論社、1983.1

2021年7月14日
大 村 謙 二 郎

 立花隆が4月末日に亡くなったという訃報がつい最近伝えられました。
 立花隆は文藝春秋の「田中角栄研究-その金脈と人脈」の記事で一躍有名になった人で、旺盛な取材、執筆活動で多分野にわたり100冊を超える著書を刊行してきた人です。ねこビルという自分の仕事場に3万冊以上の蔵書があり、その蔵書について語った本も刊行するという超人的な人だと思います。最近の著作はあまりフォローしていないのですが、一時、はまって、この人の刊行する著書をマメに買って読んでいました。立花隆を偲びながら、思い出に残る2冊を紹介します。

立花隆『中核VS革マル』(上・下)、講談社、1975.11
 この本は月刊誌『現代』にわたって連載していたものを、連載終了後、新たな取材、資料読み込みを行ってまとめたもので、上下2巻の構成になっています。
 大学時代の小さな、でも本人にとっては大きな体験を持った私はその後も、自分が関わった体験はどういう意味を持ったのだろうか、なぜ、あの時代に世界同時的に学生、若者が声を挙げ、熱狂したのかについて、気になっていましたし、当時のことを書いた本などをおりに触れて読んできました。
 ある年代以上の人にしかわからないでしょうが、60年代後半から高揚してきた日本の新左翼運動、その中でも大きな影響力を持った、中核派、革マル派の両派が70年代にはいり、血と血であらそう、殺戮の応酬に至る殺伐たる内ゲバになぜ至ったのかを、立花隆は綿密な取材でその謎を解き明かそうとしています。
 本書の内容も面白いのですが、私にとって記憶に残っているのは立花隆が雑誌連載中に両派の関係者に取材した際に、どちらの側からも不満、批判が出たことに対し、自分が両派の機関誌、政治ビラなどを批判的に丹念、綿密に読み込み、両派にもあたう限りの取材をして、自分なりに整理、分析して書いたやり方は、一方の側に加担することのない記事になっており、批判的に取材、執筆を行う自分のやり方に自信を持ったと、本書のはじめの方で書いていることです。
 ジャーナリストの矜恃を見た思いです。研究者としても、いろいろな調査、研究においても心すべきことだなと感じたことが記憶に残っています。

立花隆『宇宙からの帰還』中央公論社、1983.1
 当初の頃の立花隆の著書は田中角栄ものや日本共産党ものなど、社会的、政治的なトピックが多かったのですが、後に立花隆が述懐しているところによれば、行きがかり上、田中角栄に関わったが、本来彼のやりたかったことは、精神的、哲学的なもの科学的なものであったとのことです。
 80年代にはいり、立花は脳死問題、医学問題、先端科学技術問題等、サイエンスライター的な面での著作も数多く刊行しています。
 その中でも、本書は、人類ではじめて宇宙空間に飛び出し、月面着陸など、地球外から地球を眺めたアメリカの宇宙飛行士に、彼らの宇宙体験が彼らの内面、精神、価値観、その後の人生にどのような影響をもたらしたかを綿密なインタビュー調査で解き明かそうとした本です。
 スリリングな内容で、同じ体験をした宇宙飛行士によってもさまざまな反応、影響があったことが興味深かったし、共通する要素も興味深かったです。
 立花隆のすぐれた着想でこの調査がなり立ったようで、取材を受けた宇宙飛行士たちもはじめて、こういった形で深い取材を受けたことに驚き、感銘していたと語っています。私にとっての立花隆像の転換を見せてくれた本だったと記憶しています。