「都市プランナーの雑読記-その11」顧問大村謙二郎

ヘニング・マンケル/柳沢由実子訳『霜の降りる前に』上、下、2016.01、創元推理文庫

2020年10月28日
大  村 謙二郎

 だいぶん前に買っていたのですが、積ん読状態で、ようやく読みました。
 それほど、系統的、本格的に読んでいるのではないのですが、海外ミステリー、北欧ミステリーを散発的に読んでいます。
 ヘニング・マンケルは北欧ミステリーの代表的作家で、ちょっとしたきっかけでこの人の代表作であるスウェーデン南端の片田舎の町イースタの中年刑事、クルト・ヴァランダー警部のシリーズの存在を知ることになり、いままで、8冊読んできました。この書はそのシリーズの9作目にあたりますが、番外編といってもよいのかもしれません。ヴァランダーの娘のリンダが主人公のミステリーです。
 ヴァランダーはかつての妻モナとは離婚し、つきあっていた女性とも別れて、男やもめです。
 刑事としての能力、忍耐力はたいしたものなのですが、生活は少し破綻気味。娘リンダはストックホルムにいて、いろいろな職業を目指してフラフラしていたのですが、父親の影響を受けたのか警察官を志し、警察学校を修了して秋からイースタ署に赴任、勤務することになりました。自分の家を見つけるまでは父親のアパートで同居することになりました。
 警察官になるまでの間、リンダは昔の友人と旧交を温めていたのですが、その友人の一人、アンナがいきなり失踪した様子です。警察官になる前であり、事件かどうかもわからないので父親はリンダの行動を制止するのですが、父親のいうことを聞かず、いろいろ捜査に乗り出します。
 一方、いろいろ奇怪な事件が起こり、文化地理学の女性が森の中の小屋で惨殺死体として発見されます。
 といった形でリンダが主役となり、それにヴァランダーが心配しながら、関わっていくという展開です。
 以前のヴァランダーシリーズでもヴァランダーのイライラするような、歯がゆい行動、生活態度が描写されているのですが、この作品でも、リンダの間抜けな行動、無謀な行動がこれでもかと描かれ、ちょっとマンケルさんそれは書きすぎですよと思うところもありますが、それでも抜群のストーリーテリング技術で読ませます。
 それと同時に、スェーデン社会はきわめて個人主義が強く、生活感覚、親子、友人関係は日本社会と大分隔たっているなと思わせるところが多々あり、それはそれで、比較文化的にミステリーを読む面白さを伝えてくれます。
 著者のマンケル2015年10月に亡くなったそうです。ヴァランダーシリーズは11作まで書かれているようで、最近最後の一冊が翻訳、刊行されたので、このシリーズ全部が日本で読めることになっていますが、最後の1冊『苦悩する男(上・下)』は未読です。時間を見つけて、読んでみようと思います。