「都市プランナーの雑読記-その20」顧問大村謙二郎

斎藤美奈子『日本の同時代小説』岩波新書、2018.11

2021年3月2日
大 村 謙 二 郎

 斎藤さんは、東京新聞に週1回にユニークな視点、辛口の視点から現代世相を批評するコラムを連載していて、愛読しています。
 また、いくつかの文庫で、いろいろな文学作品を鋭く読み解いていて、これも愛読していましたが、この方が、文芸評論家でこれほど多くの文学作品を読み解いているとは驚きました。
 1960年以前までの現代文学、現代小説を扱った、文芸批評はあるらしいのですが、60年代以降、現代までの同時代小説を遡上にあげた批評はないとのことで、斎藤さんが登場となったようです。
 60年代以降、2010年代まで、純文学、ノンフィクション、エンタテインメント作品までを取り上げ、その要点と批評を行っているのが本書です。
 それぞれの年代に次のようなネーミングで時代の特質を掴んでいます。
 60年代-知識人の凋落
 70年代-記録文学の時代
 80年代-遊園地化する純文学
 90年代-女性作家の台頭
 2000年代-戦争と格差社会
 2010年代-ディストピアを超えて

 純文学系の作品が相対的に多く取り上げられており、芥川賞や各種文学賞の作品をもれなく取り上げて、論評しています。プロだから当然かも知れませんが、よくこれだけ多くの作品を読んでいるなと驚くと同時に私なら、到底つきあえないようなテーマ、ストーリーの作品を読めるなと感心します。
 60年代、70年代あたりまでは私も読んだ作品がありますが、80年代以降の純文学系の作品はまったく読んだことがないのと、私の好きなエンタメ系はあんまり取り上げられていないなと、これも面白い発見でした。
 斎藤さんの好み、偏向が本書の随所に出ているのも興味深いです。たとえば、斎藤さんは両村上(村上春樹、村上龍)はあまり高く評価していないようです。
 斎藤さんの取り上げた作品群の中で、読んでみたいと思ったのはそれほど多くはありませんが、これに挑戦するのも結構時間がかかりそうです。