「都市ブランナーの雑読記-その12」顧問大村謙二郎

津野海太郎『読書と日本人』岩波新書、2016.10

2020年11月5日
大 村 謙二郎

 津野さんは劇団「黒テント」の制作・演出、晶文社の取締役、雑誌の編集長などの出版業経歴を踏まえて、和光大学教授・図書館長などを務めた方で、本に関して多くの著作のある人です。この方の書いた暮らしの手帖の創刊者・編集長である花森安治の評伝、『花森安治伝:日本の暮らしをかえた男』(新潮文庫)も面白く読みました。
 この書はそういった本読みのプロの津野さんが、日本人が読書にどう関わってきたかについて記した、読書通史です。
 最初は、読書の黄金時代である20世紀に焦点をあてて、本書を書こうとしていたのですが、編集者の要望もあり、日本人はどういった形で本を読んできたのかという、素朴な疑問に答えるためにも、「読書と日本人」というテーマに取り組んだとのことです。
 本書は2部構成で、第1部が日本人の読書小史を扱っています。
 源氏物語を当時の人々はどのように読んだのかという話題から、江戸期の西鶴が活躍して、多くの庶民にまで本読みが広がった印刷革命を経て、明治のベストセラー、福澤諭吉の「学問のすすめ」がなぜ、多くの人々に読まれるようになったか、義務教育の力などについて、論じています。
 第2部は「読書の黄金時代」として、20世読書のはじまりはどのように起こってきたのかを説き起こしています。円本ブーム、文庫の普及がいかに読書の黄金時代を形成したのかを扱い、さらに、読書法が20世紀を通じてどう変わってきたのか、戦後の焼け跡からの再出発で活字への渇望がいかに形成され、それが高度成長期を迎え、現代に通じるにしたがって、活字離れが進み、<紙の本>と<電子の本>の時代を迎えたなかでメディアが多様化する中で、今後の読書環境、読書スタイルはどうなるかを展望しています。
 読書スタイルとしての「学者読み」、「教養主義的読書」、「反書物主義読書」などのスタイルの変遷を読み解いているのは興味深く読めました。
 それにしても、最近の公共図書館が、ベスセラーものばかり、売れている本ばかりを集めて、かたい本、じっくり読む本を取りそろえなくなってきていることは、公共図書館の理念の崩壊ではと嘆いている点は同感です。
 津野さんの個人的読書体験史を踏まえた記述があり、面白く読めました。