「ペットフード法」

「ペットフード法」

 環境省で国会担当の仕事をしているとき(2007年)のことです。北部アメリカでペットである犬や猫が多数腎不全になって死亡するという事件がありました。ペットフードに有害物質であるメラミンが混入していたことが原因ではないか、とされましたが、日本でもメラミンが混入したペットフードが輸入販売されていることがわかりました。
 内閣官房長官から早速対策を講じるようにという話があり、農水省と環境省で研究会を立ち上げ、ペットフードの安全確保のための議論がおこなわれました。研究会報告で法規制の導入が必要であるとの方向性が示され、立法作業にとりかかりました。
 直接の担当ではなかったのですが、法律の目的が「愛がん動物の健康を保護し、動物の愛護に寄与すること」とされていました。環境法で、特に何かを規制するときは、だれのためにするのか、ということがたまに議論されます。「人間」のためにするのか、「自然」または最近では「地球」のためにするのか、ということです。これまでの公害関係法では「国民の健康の保護」とか「生活環境の保全」という表現が使われていますし、また、環境基本法でも目的規定に「現在および将来の国民の健康で文化的な生活の確保に寄与するとともに人類の福祉の貢献すること」とあります。法律で人間社会のルールを決めるということですから、「人間」のための法律ということは間違いないと思われます。当時の動物愛護法をみてみても、少し長いのですが、法の目的は「動物の虐待防止、動物の適正な取扱いその他動物の愛護に関する事項を定めて国民の間に動物を愛護する気風を招来し、生命尊重、友愛及び平和の情操の涵養に資する」とされていましたので、動物愛護法の目的も「人間」のためということができるでしょう。
 ペットフード法のこの条文をみたとき、「愛がん動物を保護し、・・・」としか書いてないので、担当者に「言外には動物愛護法と同じように生命尊重等の情操の涵養に資するということが含まれてますよね」と問いかけましたが、特に返事はありません。愛がん動物の保護がストレートに法の目的になっているのはどうか、なんて思ったものでした。詳しいことはよくわかりませんが、関係者の意向もあったのか、と思います。愛がん動物にたいする思い入れはひとそれぞれですから。
 法律ができると国会の与野党の関係議員に説明して回ります。説明していると、ペットに対する思い入れの強弱もわかってきます。犬を大変かわいがっている方にはドッグフードの話をします。猫をかわいがっている方にはキャットフードの話。「この法律は是非必要だ」という方から、「ここまで法律をつくるならペットの疾病対策もするのか」という言う方までいろいろです。いずれにしても、2008年6月に法律が成立しました。
 ちょうど同じ時期に議員立法で生物多様性基本法も制定されています。生物多様性基本法の目的は「豊かな生物の多様性を保全し、その恵沢を将来にわたって享受できる自然と共生する社会の実現を図り、あわせて地球環境の保全に寄与すること」とされました。この規定の影響を受けたのかもしれません。動物愛護法の目的規定も2012年改正で修正され、現在では「人と動物の共生する社会の実現を図ること」という文言が入っています。
 もともとペット関係は民法上「物」の扱いで、民法で処理できることから、環境法という意識はありませんでした。現在でも動物愛護法が環境法かと聞かれれば、議論のあるところでしょう。ただ、目的規定が改正され「自然との共生」の一環として「動物との共生」が加えられたことで環境法らしくなってきたともいえそうです。

 我が家の愛犬
犬種はミニチュアシュナウザー
名前はロン