都市プランナーの雑読記-その104/千葉雅也『現代思想入門』

都市プランナーの雑読記 その104

千葉雅也『現代思想入門』講談社現代新書、2022.03

2025年11月5日
大  村 謙二郎

 千葉は1978年生まれで、私の子供の世代だ。専門は哲学、表象文化論だが、小説も書き、芥川賞候補にもなったとか、多才の人だ。
 この書はフランスの代表的な現代思想家であるデリダ、ドゥールズ、フーコを取り上げ、現代思想が二項対立的な哲学、思想を脱構築してきた所以、背景、内容などについて、出来る限りわかりやすく解説、解読する試みの書だ。
 冒頭、千葉は複雑なことを単純化しないことが大事で、現代世界、思想を「高い解像度」で捉えることを目標としている。
 デリダを概念の脱構築、ドゥールズを存在の脱構築、フーコを社会の脱構築を図った人として、その主著を取り上げて解説している。3人にそれぞれ1章が割り当てられている。
 ポストモダン思想といった形で流行語ともなった、差異、リゾーム、脱構築などについて事例を交えながら解説している。
 頭の中にすっきり入る話でもないし、細部を再現できるわけではないが、正常と異常が対立するものでないこと、同一性とか、アイデンティティとかが必ずしも明確に隈取りされるわけでないこと、常識と思っていた考えが揺すぶられることをうまく解き明かしている。
 フーコの権力観も一方的な上からの権力でなく、それを支える、受け入れる被支配層がいて、それが権力を支えていること、等の解説は蒙を啓かれる。
 都市計画も制度として都市を計画的、秩序正しく構築するという側面があり、安定、安心、公衆衛生を求める都市計画が、かえって、都市の魅力、存立基盤を毀損しているのではという考えも大切だと認識させてくれる。