弁護士小澤英明「6月の庭」

「6月の庭」(2024年6月)

2024年6月24日
小 澤 英 明

 6月になると庭の緑はより一層元気になるが、花は少なくなる。わが庭は紫陽花のほかは見るべき花がグッと減ってしまう。その中でアガパンサスは例外で、6月に入ると、ニョキニョキと花を咲かせる茎が伸びてきて、その先にたくさんの花を花火のように咲かせる。先日、クロアゲハが蜜を吸いにきて、私が近づいているのに逃げないので写真を撮った。
 蝶の種類を確認するのは今やスマホで簡単だが、読み物としても楽しめる師尾信さんの「蝶ウォッチング百選」(正・続)(晩聲社)は種類の確認も兼ねてよく手にする。師尾さんは、新宿区の西落合に幼少からお住まいで、かつては近隣にカラタチの垣根が多かったので冬になるとお兄さんとクロアゲハの蛹をその垣根に探したとのことである。我が家(練馬区だが西落合から比較的近い)にはカラタチの木はないけれど、サンショウの木があるので、注意していれば、クロアゲハの蛹を見つけることができるのかもしれない。
 アガパンサスは、我が家のもとの所有者が植えられたもので、私が引き継いでもう10年にもなるが、より一層元気で、大きな株に成長した。何の世話もしていないが、日当たりのよいところに陣取っているせいか大変元気である。この時季には欠かせない。
 梅雨時に美しくなる植物にギボウシ(学名ホスタ)がある。これは花よりも葉が美しい。園芸用に数多くの品種が作り出されている。この家に引越してきて、多くのギボウシが庭に植えられいるのを見て、はじめてその魅力を知った。少し場所をとるので、ギボウシを楽しめる庭となると東京では贅沢かもしれない。大きくなるのに時間がかかるので大きな株は園芸店では安くはない。冬に地表部分は枯れるが、春になるとまた青々とした葉を広げて、虫にも病気にも強い。
 梅雨時になると、門から玄関までの通路のわきにうっすらと生えている苔がいい感じになる。雨の後、朝日を浴びて緑が美しく映える時などは自慢したくなるくらい。日差しが強くあたるところではなく、一日中日影というところでもないところで、足をあまり踏み入れないところが一番綺麗なように思う。苔のところどころに雑草もまじる。この雑草を丁寧に取りのぞくと、草色の絨毯のようにもなりそうなのだが、怠けているので、そこまでに至ったことはない。
 この家に引っ越してきて、はじめて苔の魅力を知った。いくつか本も買ったが、田中美穂さんの「苔とあるく」(WAVE出版)は良書である。苔入門者に優しく、苔の楽しみ方を教えてくれる。写真も多い。田中さんは、倉敷で「蟲文庫」という書店を開いておられる。ちょうど本を買った頃、歴史的建造物の関係で倉敷に行ったことがあり、蟲文庫を探して店を訪ねたことがある。店内には田中さんと思われる女性がおられた。私の気を引く本もたくさんあって、2、3冊本も買ったのだが、田中さんに声をかけられなかった。「あの本、いい本ですね。」と言えばよかったと今になって思う。

       
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