都市プランナーの雑読記-その43
若林幹夫『都市論を学ぶための12冊』弘文堂、2014.03
2022年4月4日
大 村 謙 二 郎
若林さんは1965年生まれの社会学者で現在は早稲田の先生。都市、郊外に関する著作を沢山刊行している人で、私も何冊が読んだことがありますが、ちょっと、論理が難解というか込み入っている感じをもちました。社会学者によって、違いがあり、割と波長が合って、読みやすい、理解しやすい人と、そうでもない人がいますが、若林さんはどちらかというと後者です。でも、重要そうなことを書いているなということは何となくわかります。
さて、この本ですが、都市とはなにか?都市は社会の現在とどう関わるのか?という問いに対して、根源的に答えるために、若林さんが何度も読み返してきて、考えてきた本を取り上げて、この問題にアプローチするやり方で著した本です。
あげているテーマ、問いかけと、取り上げている本は以下の通りです。
- 都市を論じるとはどういうことか:岩波書店編集部編・清水幾太郎監修「東京-大都会の顔」(岩波写真文庫47,岩波書店、1952)
- 都市をめぐる大きな物語:ルイス・マンフォード「歴史の都市 明日の都市」(生田勉訳、新潮社、1969)
- スペクタクルと存在論:大室幹雄「劇場都市-古代中国の世界像」(三省堂,1981→1994年、ちくま学芸文庫)
- 日本の都市とは何だったのか:「定本 柳田国男集 第16巻」(筑摩書房、1969)
- 市民の共同体としての都市:マックス・ヴェーバー「都市の類型学」(世良晃志郞、創文社、1964)
- 現代都市の発見:松本康編「都市社会学セレクション第1巻 近代アーバニズム」(日本評論社、2011)
- 都市という危険な領域:ルイ・シュヴァリエ「労働階級と危険な階級-19世紀前半のパリ」(喜安朗・木下健一・相良匡俊訳、みすず書房、1993)
- 過去と未来の間で-近代都市計画の誕生:フランソワーズ・ショエ「近代都市-19世紀のプランニング」(彦坂裕訳、井上書院、1983)
- 舞台としての都市、上演としての盛り場:吉見俊哉「都市のドラマトゥルギー-東京・盛り場の社会史、弘文堂、1987→河出文庫、2008」
- 都市と都市論のポストモダン:デヴィッド・ハーヴェイ「ポストモダンの条件」吉原直樹監訳、青木書店、1999)
- 20世紀のアーバニズム:レム・コールハース「錯乱のニューヨーク」(鈴木圭介訳、筑摩書房、1195→ちくま学芸文庫,1999)
- 書を持って街へ出よう:吉見俊哉・若林幹夫編著「東京スタディーズ」(紀伊國屋書店、2005)
不勉強でまだ読んだことがない本が半分ですし、一応読んだけれども、理解しがたかった本もあり、若林さんの読み解きはなかなか鋭く、新鮮な指摘もあり啓発されました。
それと同時に、社会学者はこう読むのか、都市計画を一応専門とするものから見たとき、社会学者は都市工学者(若林さんはこう呼んでいますが)を、このように理解(誤解?)しているという点もわかり、なかなか、面白かったです。
若いときは知的スノビズムもあり、ここにあげられている本を、是非読まねばと思ったのでしょうが、さすがに、いまはそれほどの気力もなく、せいぜい、あらためて、かつて読んだ本を引っ張り出して、目を通そう中と思う次第です。