顧問鷺坂長美「防炎品について」

防炎品について

2023年2月14日
鷺 坂 長 美

 消防庁では毎年、春と秋に火災予防運動を行っています。全国各地で火災予防のための啓発活動やイベント等が催されます。普及啓発用のポスターも毎年作成されますが、ここ数年、ポスターのモデルになっている女優さんに注目が集まっていると聞きます。というのも、ポスターのモデルとして採用されるとその後ブレイクするという噂があるということのようです。過去のモデルさんをみてみますと、確かに、有村架純さんが2013年に採用されるとNHKの朝ドラ「あまちゃん」でブレイクしたように、翌年の広瀬すずさん、葵わかなさん、永野芽衣さんと続けて、まだ若手と言われる女優さんがポスターに採用されると、その後ブレイクしているようです。
 秋から冬にかけて、空気が乾燥し、また、暖房器具を多く使うことから、消防庁等で住宅火災への注意喚起が行われますが、先日、製品評価技術基盤機構からもいわゆる「着衣着火」に対する注意喚起が行われました。ガスコンロのように炎の出る機器だけではなく、電気ストーブ等炎の出ない熱源に衣服が接触したりすると着衣着火(着ている衣服等に火が点くこと)が発生するとしています。消防庁の統計でも毎年100人前後の人が亡くなっています。製品評価技術基盤機構では、ガスコンロや電気ストーブには近づきすぎない、火を扱う際は「だるだる、もふもふ」の衣服を避ける、等のことが注意喚起されていました。その中に防炎加工している製品とそうでないものとでは、着火の状況が全く異なることが示されていましたが、その利用についてあまり触れられていないのは少々物足りなく思いました。防炎加工しても全く燃えなくなるものではありませんが、燃えひろがるのに時間がかかります。その間に消火できたり、服であれば脱いだりできたりします。人への被害の防止には大いに役立ちます。
 私は消防庁ではいわゆる火災予防関係の仕事にはあまりかかわりませんでしたが、退職後、日本防炎協会でしばらくお世話になっていました。よく「防災」協会と間違えられ、地震災害時等には大変でしたでしょう、などと言われたりしましたが、「防災」ではなく「防炎」です。消防法でその利用が義務付けられている「防炎物品」や任意の制度である「防炎製品」の防炎性能の試験を行っている機関です。「防炎物品」とは、消防法の防火防炎対象物(劇場、飲食店、百貨店、旅館等不特定の多数の人が集まる施設や病院、老人ホーム、幼稚園等の社会的弱者のいる施設)において、使用するカーテンやじゅうたん、工事用シートのことで、一定の防炎性能を備えたものでなければならない、というものです。一方、防炎製品とは、日本防炎協会で独自に行っている制度で、一定の防炎性能を備えた寝具類、テント・シート・幕類、防災頭巾、衣服等です。調理等で火を扱う場合には、防炎製品であるエプロンを身に着けることで、着衣着火対策には有効です。
 2020年からの新型コロナの流行に対し、コンビニ等で感染防止用の透明シートが多用されるようになりました。あるコンビニでお客さんが、買ったライターを試しに点けたところその透明シートに燃え移り大騒ぎになったそうです。日本防炎協会では感染防止用透明シートについて防炎加工したものと防炎加工してないものとの燃焼比較実験をして、多くの方にその効果を理解してもらうことに努めました。さらに火災防止という観点から、チェーンストアとか、コンビニ等のそれぞれの業界を通じて防炎加工の施された製品の使用を推奨していただきました。いくつかの量販店ではレジ等に掛かっている感染防止用シートに、これは防炎加工されています、との表示されるものもありました。徐々に普及していったのではないか、と思います。火災予防にはこうした地道な活動も大切だと思いました。

   
  (エプロンの燃焼比較、同時着火50秒後 左が防炎製品)
(日本防炎協会パンフレット「防炎製品いろいろ」より)