顧問鷺坂長美「海外ドラマ『シカゴファイア』」

海外ドラマ「シカゴファイア」

2022年4月1日
鷺 坂 長 美

 我が家のテレビはケーブルテレビを経由しているため、一般の地上波以外にBSチャンネルやCSチャンネルが視聴できる。基本料金に含まれている局数は40局を超えていて、プロ野球の公式戦はほとんどライブで中継されている。私は名古屋で育ったこともあり中日ドラゴンズを子供のころから応援しているが、子供のころにテレビ中継といえば巨人戦のみであったことからすれば大変便利で、日曜日の昼等は中日戦のデーゲームを楽しむことも多い。そのほか、邦画、洋画いろいろな映画が楽しめるし、海外ドラマの専門チャンネルでシリーズもののドラマを楽しむことも多くなってきている。
 最近楽しみにしているのが「シカゴファイア」というドラマである。これは、シカゴ市消防局51分署の消防士の日々の生活を描いたドラマで、災害現場での活躍あり、被災者との心温まる交流あり、消防局内の派閥争いあり、恋愛あり、さらに同じシカゴシリーズである「シカゴPD」(シカゴ市警察21分署の刑事ドラマ)や「シカゴメッド」(シカゴ市救命センターの医療ドラマ)とのコラボレーションありでなかなか楽しめる。日本ではシーズン8まで放送されているが、アメリカではシーズン9も放送されているというから、そこそこの視聴率をとっているのだろう。毎回の放送では、いつも3回程度の出動要請があり、火災現場、交通事故現場、救急現場に出動し、火災から逃げ遅れた被災者の救助や事故現場で被害者に救命措置を行って医療センターに搬送するなど、毎回同じような活動でありながらもはらはらさせられる。そこがドラマの醍醐味でその後の被害者との交流等も描かれ、ドラマであることが分かっていながら心打たれることもある。
 ドラマなので、基本パターンは毎回同じだが、火災現場に到着すると、消火活動の前に、燃え盛っている建物の中に入って、逃げ遅れた被災者がいないか、と捜索が行われる。大変危険な現場活動となる。日本の消防でもそうした建物火災時の建物内部の捜索は消防本部の訓練等で目にしたことがあるが、木造家屋の多い日本の火災現場では、建物自体の倒壊の危険もあり、そうした活動がどの程度あるのか、と思う。ドラマなので実際にシカゴの火災現場でもどの程度の建物内部の捜索がおこなわれているかはわからないが、消防隊員の服装等の装備もそうしたことを前提にして大変重装備になっている。体格の立派なアメリカの消防士でなければ身につけられないのでは、とも思ったりする。
 日本の消防隊員の服装や装備については消防庁からガイドラインが発出されていて、一定の性能を持ったものをそれぞれのメーカーが生産している。防火服であれば日本防炎協会で、防火服を含め手袋・靴・フード・ヘルメット等については日本消防服装装備協会で自主管理のための認定等を行っている。国産物もあれば輸入物もあるが、近年、国際規格、ISO基準で一定の規格を作ろうという動きがある。日本防炎協会に在籍していたころからだから、既に一定の規格が制定されているかもしれない。しかし、ドラマの重装備の消防服や装備をみると木造家屋の多い日本とは違うのでは、という思いがする。欧米仕様で規格ができてしまうと、日本の消防事情に対応してきた国内メーカーへの影響のみならず、実際の消防活動にも支障が生じないか、少々心配になる。ドラマの中のことなのであまり気にしなくてもいいとは思うが、なんでも世界標準だといって統一するより、その国のお国柄にあった対応も必要ではないか、思ったりもする。

(町火消「め組」の纏装束、消防防災科学センター・消防博物館より)