「椿」弁護士小澤英明

椿(2019年3月)

2019年3月27日
小澤英明

 市政会館の隣は内幸町交差点の交番である。その横には日比谷公園の入口がある。公園に入るとすぐのところに烏帽子石という大きな岩が置かれている。その先を少し歩くと、下に降りる階段があって、私の事務所のある市政会館の地下に入ることができる。このルートは、内幸町交差点から私の事務所までの最短コースなのでよく使うのだが、烏帽子石の少し先に見ごたえのある乙女椿(写真参照)がある。写真を撮る人も多い。乙女椿は、椿の中では首から落ちずにいつまでも木に残ってしまい、最後がやや残念な椿だが、盛りの花の美しさでは椿の中でもかなり上等の部類である。

(市政会館の乙女椿)

  練馬の家に約6年前に引っ越してきたが、元の持主が大事にされていた木々はできるだけそのままにしている。元の持主は信州のご出身で、庭に杏子(あんず)の木を二本植えておられた。きっと、信州では杏子の花が春を告げる木として愛でられているのだろう。梅より遅く、桜より早く咲き、薄いピンクの花をつける。私の故郷の長崎では見かけないように思う。長崎でよく見かける春の花木は、椿やサザンカの種類で、実家の庭にはいくつも植えてある。肥後椿(すごく特徴的なもので、花芯が花全体を覆うくらいに広がる)も複数ある。この10年くらい、花の興味が椿に移ってきたのだが、これも郷里の遺伝子かもしれない。長崎は椿の名産地である。椿の名花として外国にも知られる玉之浦は五島の花であり、平戸にもいくつもの有名な椿がある。椿は花の容姿も美しいが、葉もつやがあり、美しい。
 練馬の家の北側には、赤い椿、光源氏(名前どおり華やか)と思われる椿、それに二本のピンクのサザンカがある。赤い椿とかピンクのサザンカとか、種類がわからないのは、引っ越して来た時から植わっていたからだが、このピンクのサザンカは、美しいだけでなく、すばらしく良い匂いがする。越してきて最初の正月を迎える少し前に、つぎつぎに咲き出したので、切り花にして玄関に置くと、さわやかな香りが広がった。切り花にするとかわいそうにも思うが、北側の見えないところで咲くよりも良いのではないか。元の持主から、これら北側の椿やサザンカはその前の持主からのもので、由緒あるものと聞いていたが、さすがに特に言及されただけのことはある。
 自宅の庭は木々を新しく植えるにはもうあまりスペースがないが、何とかスペースをつくって椿の苗を植えた。植えすぎたので、いずれは、半数くらいに減らさなければならないと思うけれど、佐世保の実家からの玉之浦(写真参照)のほか、大苗として、秋の山(白地に明るい赤の絞り)、紅卜伴(唐子咲)、西王母(ユキツバキ系の早咲きで秋に咲く)、月照(白)、五色八重散椿(京都に有名なものがある)、新苗として、福島百合(平戸のヤブツバキ)、菱唐糸(蓮華性)、出雲香(小さなピンク:サザンカとの交配のため香りあり)、オランダ紅(江戸時代からのもの)、さつま紅(鹿児島の椿)、通い鳥(江戸時代からのもの)、英勝寺侘助(鎌倉の椿)などを購入し、植えている。新苗からのものは地植え後3年経った今年やっといくつかが花を咲かせた。東京では武蔵境の船木園が椿苗の販売店として非常に充実している。

(自宅の玉之浦)