「コロナとオリンピック」弁護士小澤英明

コロナとオリンピック(2021年7月)

2021年7月1日
小  澤 英  明

 ついにオリンピック開催月に入った。正直なところ、オリンピックが強行されるとは思っていなかった。しかし、菅首相がG7でオリンピック開催を国際的に約束し、中止の選択肢は現実的ではなくなった。開催前提で対応せざるを得ない状況だと思う。関係者のご苦労ははかりしれないが、最善を尽くしていただくよう願うしかない。これまでの菅首相の記者会見や国会答弁は、恥ずかしくて子供や孫に聞かせられないものである。コロナ対策分科会が助言しても、官邸が・・などと、報道されるが、官邸とは誰のことなのだろう。選挙で選ばれた国会議員や、国会議員から指名される首相が人格識見ともにすばらしければ、政策に納得感もうまれるのだろうが、逃げの姿勢の政治家では無理である。国民が選んでいる以上、しかたがないが、このような政治を見れば優秀な学生が官僚をめざしたくないと思うのもわかる。野党政治家の人材不足は輪をかけているようにも思う。少数の例外もあるとは思うけれども。政府のコロナ対策は、尾身会長がおられるので、何とかもっていると思う。
 それならば、諸外国はどうかと言えば、中国の香港問題、台湾問題、ウイグル自治区問題、ロシアのサイバー攻撃、暗殺事件、ミャンマーの軍事政権、何もかもとんでもない北朝鮮など、「よくぞ日本に生まれたり」と、まことに勝手ながら(正義の人士ならば傍観などせずに困った外国の人たちに手を差しのべるはずだが)、隣の芝生がよく見えるような光景はなかなか見当たらない。アメリカはバイデン大統領が老骨に鞭打ってがんばっていると思うが、アメリカ国民の分断は根が深い。イギリスびいきの私だが、メイ首相が失意の辞任をされた時から、イギリスびいきにも影がさしている。
 これ以上、政治の悪口を言っても仕方がないので、気分を切り替えて、オリンピック競技に目を転じると、今回の日本選手権の男子100m競走は見ものだった。現時点では、オリンピックの日本代表は、多田、山縣と決まっているが、あと一人は、桐生に決まってほしい。小池とほとんど同着であり、小池には200mの道もあるから。つい先日(6月6日)の山縣が日本新記録を出した布施スプリントでは、山縣が多田を引き離して首位だったのだから、このクラスの競走は、少しの出来不出来で勝敗が分かれる世界だとわかる。女子100mは、あまり報道されないが、最近、私は、女子短距離走にも興味がある。気分転換に、時々、誰かがアップしてくれているYouTubeで観戦する。「ああ、あんなに速く走れたら、どんなに気持ちがいいだろう」とうらやましい。短距離走は、外国選手と差がありすぎるので、拮抗した日本人同士の競技のYouTube観戦となるが、有名選手ばかりでなく、一般には全然知られていない若手選手の試合も良いものである。
 それにしても、オリンピックがこれほど拝金主義になったのはいつからだろうか。かつてオリンピックは金儲けのビジネスとは一線を画していたのではないか。それでは、現実とあまりにもかけはなれ、理想主義すぎるということで、方針変更があったと思うが、今やオリンピックは金儲けのビジネスに浸食されてしまった感がある。平和の祭典ならば、祭典にふさわしい場所と時があるはずである。

(庭のダリアとバーベナ)